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第2部。3部からなるこの本の中で一番長 い章で、バーガーとヴィスコンティとの仲が語られている。時代でいうと1964年から1976年までの期間。
バーガーはペルージャのサマースクールでイタリア語を勉強しているところだったが、
彼のヴィスコンティとの最初の出会いは、運命的に訪れた。
バーガーはイタリア語以外にも歴史や建築の勉強もしなければならなかったので、友達とアッシジに行こうとしていた(彼は芸術に興味があり、絵画や文学についても、よく語っている。実際、彼は、たとえばルートヴィヒ2世など、自分が演じる役に関する本は手当たり次第に読んだ。また、彼の愛読書のひとつはフランスの作家ジャン・ジュネの『葛藤』である)。ところが、その友達はフィ
レンツェの近くのボルテッラの方に行きたいと言いだしたので、二人は、とあるピザ店に入ることにした。で、それが奇しき運命だっ
たのだ。実は、まさにこの日、この場所で、ヴィスコンティが映画(クラウディア・カル
ディナーレ主演の『熊座の淡き星影・・・』)を撮
っていたのである!!
映画撮影に興味を持ったバーガーは何もかも忘れて何時間も撮影に見入り、空想のなかでは、すでにその場で役を演じているのだっ
た。日が傾いて肌寒くなってきたが、バーガーはシャツ一枚の姿である。ヴィスコンティ
はずっと前から彼の姿を気にとめていたのだろう、アシスタントのひとりに言って、彼にスカーフを渡したのだ。しばらくしてヴィスコンティ自らが彼のそばに来て、どうしてこの場にいるのかと、完璧なドイツ語で尋ねた
。バーガーが学校の勉強のために調査に行く途中だと答えると、ヴィスコンティは翌日のランチに彼を招待したのだ。そして当日のそのランチ。ヴィスコンティはバーガーをいっときも側から離すまいとしたが、若者の方は自分の感情の乱れに怖れをなした(ヴィスコ
ンティはバーガーにとって初めての男ではなかったが、恋愛感情をもって眺めた初めての男だったのだ)。バーガーはその場から逃げ出したが、ペルージャとザルツブルグの住所を書き残していくことは忘れなかった。実に
、バーガーが初めの予定どおりアッシジに行
っていたなら、二人の出会いはなかったので
ある!!!
バーガーは二人の関係が堅実なものであることを望み、パリに住んで贅沢をしたいと言ったので、二人はパリで暮すようになった。
ヴィスコンティは、どちらかというと保守的なところがあるので、自分がゲイであることを知られるのを、周りの者に(彼はコックや女中を何人か雇っていたが)知られるのさえ嫌ったから、二人は別々の寝室を持ち、夜中
にバーガーがヴィスコンティの寝室に忍んでいくのだった…。そして事が済むと、自分のベッドに戻って寝るようにとヴィスコンティ
はバーガーに言うのだった。これは、ヴィスコンティがバーガーの若さを考えたものである。バーガーには若い仲間との付き合いが必要だった。だから夜になるとバーガーは、しょっちゅう密かに家を抜け出した。この夜の逃避行はますます激しくなっていった。一方のヴィスコンティは、映画を撮ったり脚本を書いているとき以外の時間は、本を読んだりクラシックを聴いたりして過ごすのが趣味だった。
ヴィスコンティとは、最初は遊びのつもりだったのだけれど、すぐに本当の恋に落ちた
、とバーガーは告白している。ヴィスコンティはバーガーにとってはただの愛人ではなく
、友であり、父であり、また師でもあった。 ヴィスコンティはバーガーに英語がもっとう
まくなるようにと指導し、また文学などの芸術の指導もした。ヴィスコンティ自身も、イスチアにある自分の城
“ラ・コロランビア” の改装を手掛けたほどで、ヴィスコンティは現代最高の建築家だ、とバーガーは言っている。
ヴィスコンティは整理整頓が好きだったので、バーガーも今でも変な癖を持っている。
たとえば住まいの掃除。まあ、ちゃんと掃除できた試しはないけど。それからまた、家具の置き換えが好きで、ひと晩中それをやっていたりする。スーツケースの荷造りにも異常な熱意を注ぐ。彼がそのことを語ると、まるで科学の話をしているみたいだ。旅行前には
、その荷造りで丸1日かかるのだそうである 。一番大切なことは、衣服に皺がつかないようにすることだそうだ。このごろでは彼は、クスリやアルコールよりも、部屋の掃除や家具の並べ替えの方が好きになったと言っている。とはいっても、酒や何かのいけない物にも、ときどき手を出しているが。
ヴィスコンティはまた、バーガーを多くの名士たちに紹介した。バーガーがロンドンに
いたころの知合いはミュージシャンやモデルたちだったが、ヴィスコンティに紹介してもらったのは国際的なアーチストたちである。
指揮者レオナード・バーンスタイン、オペラ歌手のマリア・カラス、そしてバレー・ダンサーのルドルフ・ヌレエフ。このヌレエフとは、バーガーは一時関係を持った。ヌレエフ
はセックスの超人だったが、バーガーはロシア人特有のニンニクとウォッカ好きには付いていけなかった。ヌレエフはバーガーと同棲
したがったが、バーガーはヴィスコンティの特権を彼に渡すようなことはしなかった。ヌ
レエフが彼の愛人だったのは、ほんの短いあいだで、その間もヴィスコンティは、バーガーの夫であり、父親だったのだ。
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